目次
光線療法（紫外線療法）とは
光線療法とは、紫外線を皮膚に照射し、炎症や免疫反応をコントロールする治療法です。主に尋常性乾癬や白斑、アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚疾患に用いられます。
紫外線には、過剰に働いている免疫細胞の働きを抑えたり、細胞増殖を抑制したりする作用があることが特徴です。
外用薬や内服薬だけでは改善が難しい症状にも有効性が確認されています。
光線療法の種類
光線療法には、いくつかの種類があります。PUVA療法、narrow band UVB療法、エキシマレーザーなどが代表的です。皮膚の状態、病変の範囲、症状の重症度などに応じて医師が最適な治療を選択します。
PUVA療法
PUVA療法は、ソラレンという薬剤を併用して行う光線療法です。ソラレンによって皮膚の紫外線感受性を高めたうえで、UVAを照射します。
これにより、皮膚の過剰な細胞分裂や免疫異常を抑制する効果が得られるのです。ただし、薬剤による副作用や日光過敏のリスクがあるため、照射後は紫外線対策を徹底する必要があります。
narrow band UVB療法
narrow band UVB療法（ナローバンドUVB療法）は、波長311nmの狭い範囲の紫外線のみを照射する方法です。従来のブロードバンドUVBと比べて炎症や赤みのリスクが少なく、より安全性が高いとされています。
免疫バランスを整え、皮膚の炎症を鎮める作用があり、乾癬や白斑、掌蹠膿疱症などの治療に適しています。痛みはほとんどなく、短時間で治療が終わるのがメリットです。
エキシマ治療
エキシマ治療とは、308nm波長の紫外線を用いた治療法の総称です。限局した患部のみにピンポイントで照射できるため、周囲の正常な皮膚への影響を最小限に抑えられます。
「エキシプレックス308」「XTRAC」「フレクシス」「エクシス308」「セラビーム UV308 mini LED」など、さまざまな機種が存在します。
エキシプレックス308
308nmの波長を持つエキシマライトを使用した機器です。重量950gとコンパクトでハンディタイプとなっていながら、照射面積が25cm2と大きいため、施術時間を大幅に短縮できます。
病変部のみに照射できるアタッチメントがあるので、周辺の皮膚へのダメージを防ぎながら施術することが可能です。
XTRAC
XTRACは、国内では2019年に薬事承認を取得したのエキシマレーザー治療機器です。308nmの紫外線を高出力で照射することで、皮膚の免疫異常や炎症反応を正常化し、症状を改善します。
周囲の正常な皮膚を避けて病変部のみ照射できるため、安全性が高く治療後の赤みも軽度に抑えられます。
フレクシス（FlexSys）
局所的な病変に対して柔軟に対応できる、光線療法機器です。複数のスポットサイズから選べるため、患者の負担を軽減しながらニーズに合わせて適切な治療が行えます。
波長308nmの紫外線療法を採用しており、副作用が少なく短時間で治療が完了する点が評価されています。
エクシス308（ExSys 308）
コンパクトながら、308nmのエキシマライトを搭載した医療用の光線療法機器です。細かく照射範囲を調整できるため、顔や指などのデリケートな部位にも使用できます。
安全性と効果のバランスに優れ、安定した治療効果が得られることから、多くの皮膚科で採用されています。
セラビーム UV308 mini LED
セラビームは、308nmの波長を持つUVB-LED光源を採用した医療用の光線療法機器です。
従来のキセノンランプではなくLEDを使用しているため、安定した出力と高い再現性を保ちながら、より効率的な治療ができます。
光線療法の特徴
光線療法は、薬の内服や外用とは異なり、紫外線の力を利用して皮膚の炎症や免疫異常を抑える治療法です。症状のある部分だけにピンポイントで治療を行えるため、健康な皮膚への刺激を最小限に抑えながら効果を発揮します。
また、薬剤を使用できない方でも治療が可能で、副作用が比較的少ない点も魅力です。短時間で施術が終わるため、日常生活への負担も軽く、継続しやすい治療法として皮膚科で採用されています。
光線療法の仕組み
光線療法は、特定の波長を持つ紫外線を皮膚に照射し、過剰な免疫反応を鎮めたり、皮膚細胞の増殖を抑えたりする仕組みを持つ治療法です。
紫外線が強くなる季節に乾癬やアトピー性皮膚炎の症状が軽減することが以前から知られており、そこから紫外線の研究が進められました。
その結果、308～313nmの波長の紫外線が皮膚疾患に有効であることが分かり、現在はこの波長を使用した光線療法が行われています。
光線療法（紫外線療法）の適応疾患
光線療法は、外用薬や内服薬だけでは改善が難しい慢性皮膚疾患に対して有効であり、保険適用で受けられる場合も多くあります。
以下では、光線療法の主な適応疾患について解説します。
尋常性乾癬
尋常性乾癬（じんじょうせいかんせん）は、皮膚の細胞が過剰に増殖し、赤みや銀白色のかさぶたのような鱗屑（りんせつ）が生じる慢性の皮膚疾患です。
光線療法は、紫外線を照射して皮膚細胞の増殖スピードを抑制し、炎症を鎮める効果があります。ステロイドやビタミンD誘導体の外用薬で十分な効果が発揮されない場合に光線療法が行われることがあります。
掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症（しょうせきのうほうしょう）は、手のひらや足の裏に小さな膿を持った発疹が繰り返しあらわれる炎症性の皮膚疾患です。かゆみや痛みを伴い、日常生活に支障をきたすこともあります。
ウイルスや細菌が原因ではなく、対症療法を行うことが基本です。最近は免疫が関係していることも分かってきたため、光線療法も選択肢の一つとなっています。
円形脱毛症
円形脱毛症は、免疫の異常によって毛根が攻撃され、円形状に毛が抜け落ちる疾患です。光線療法は紫外線の免疫調整作用を利用して、毛根への自己免疫反応を抑制し、毛の再生を促進します。
治療を継続することで毛根の炎症が鎮まり、徐々に新しい毛が生えてくる症例も多く見られます。
菌状息肉腫
菌状息肉腫（きんじょうそくにくしゅ）は、皮膚に発生するT細胞性リンパ腫の一種で、皮膚の発疹や紅斑、かゆみなどが長期間続く疾患です。
光線療法は、免疫の異常によって活性化したリンパ球を抑制し、炎症を鎮める働きがあります。
慢性苔癬状粃糠疹
慢性苔癬状粃糠疹（まんせいたいせんじょうひこうしん）は、皮膚に小さな丘疹が多数あらわれる慢性炎症性の皮膚疾患です。
原因は解明されていませんが、現時点ではT細胞の働きで炎症が起きていると考えられています。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下やアレルギー反応によって慢性的なかゆみや湿疹を繰り返す疾患です。光線療法では、紫外線によって免疫バランスを整え、過剰な炎症反応を抑える効果が期待できます。
白斑
白斑は、皮膚のメラニンを作る細胞が減少または消失し、皮膚が部分的に白くなる疾患です。光線療法では、残っているメラノサイトの働きを紫外線によって活性化させ、色素の再生を促します。
類乾癬
類乾癬（るいかんせん）は、乾癬に似た発疹があらわれる皮膚疾患で、紅斑や鱗屑などを伴います。皮膚T細胞リンパ腫と呼ばれる皮膚がんの一種に移行する可能性があるため、注意が必要です。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは、リンパ球ががん化する病気のことです。首や脇の下など、リンパ節の多いところが腫れたりしこりができたりします。
症状は発熱や発疹、腫瘤などさまざまです。病型によっては、光線療法が適応となる場合があります。
当院で行っている光線療法
当院では、患者さま一人ひとりの症状や肌状態に合わせて、光線療法を行っています。
光線療法の機器には多くの種類がありますが、当院では「セラビーム」という装置を導入し、乾癬や白斑、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎など幅広い皮膚疾患の治療に活用しています。
セラビーム
当院で採用している「セラビーム UV308 mini LED」は、308nmの波長を持つUVB-LEDを光源とし、患部に対してピンポイントに照射を行う光線療法用の医療機器です。
LED光源の特性を活かし、高出力かつ安定性の高い紫外線照射を実現しています。照射時間は従来装置の約4分の1という速さを誇り、患者さまの負担を軽減することが可能です。
医療機器認証を取得しており、乾癬、白斑、掌蹠膿疱症、菌状息肉腫、悪性リンパ腫、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症など多くの皮膚科疾患において保険適用の治療機器として使用できます。
セラビームの効果
セラビームによる光線療法は、紫外線の免疫調整作用を活かして炎症を鎮める働きがあります。以下のような疾患に対して、有効性が確認されています。
- 尋常性乾癬
- 掌蹠膿疱症
- 円形脱毛症
- 菌状息肉腫
- 慢性苔癬状粃糠疹
- アトピー性皮膚炎
- 白斑
- 類乾癬
- 悪性リンパ腫
セラビームを採用した理由
当院がセラビームを採用している理由は、安全性・効率性・利便性のすべてを兼ね備えた光線療法の機器だからです。
セラビームは308nm波長特異性にもとづいた安全設計により、治療効果を維持しながらも不要な短波長によるDNA損傷や皮膚がんのリスクを最小限に抑えられます。
さらにLED光源の採用により安定した高出力照射が可能で、短時間で施術が完了するのも特徴です。施術時間が短いため、忙しいオフィスワーカーの方でも通勤や仕事の合間に効率的に治療を受けられます。
また、小型・軽量設計のため、身体の部位や姿勢を問わず柔軟に対応でき、顔・手・足など局所的な部位への照射も容易です。安全で負担の少ない治療環境を提供するため、当院ではセラビームを導入しています。
光線療法（紫外線療法）の治療期間の目安
光線療法の治療期間は、皮膚疾患の種類や症状の重さなどによって異なります。1回の照射で劇的な改善が見られるわけではなく、一定期間継続して行うことで徐々に効果があらわれます。
光線療法の治療期間
光線療法の治療期間は、疾患や反応の個人差によって変わります。尋常性乾癬の場合は約3ヶ月から1年、掌蹠膿疱症は約3ヶ月から5ヶ月、白斑は約6ヶ月から1年ほどが治療期間の目安です。
円形脱毛症の治療期間は、脱毛の範囲や重症度によって大きく異なります。限定的な単発型では週2-3回の通院で約2ヶ月程度、週1回で約4～5ヶ月程度が目安となります。
複数の病変を有する多発型では30～40回程度の照射が必要となり、より長期の治療期間を要します。
光線療法の通院頻度
通院頻度は、治療の対象となる疾患によって異なります。
初期治療段階（導入期）尋常性乾癬、白斑、円形脱毛症は週2～3回の頻度で治療を行うことが推奨されます。
掌蹠膿疱症は週1～2回の頻度で治療を行うことが一般的です。 維持療法（症状改善後）は医師の判断に基づき、通院頻度を段階的に減らしていきます。
光線療法（紫外線療法）で起こり得る副作用
光線療法は、皮膚疾患の改善に高い効果を発揮する一方で、照射量や皮膚の状態によって一時的な副作用があらわれることがあります。
いずれも多くの場合は軽度であり、副作用が出た場合でも数日から数週間程度で自然に改善するケースがほとんどです。
赤み、ひりつき
光線療法では、照射後に皮膚の一部が赤くなったり、ひりつきを感じたりすることがあります。これは、紫外線によって軽度の炎症が起きているためです。一般的には、数時間から数日で自然に治まります。
水疱
まれに、照射後に小さな水疱ができることがあります。これは、照射部位に紫外線が強く反応した場合に起こる一時的な副作用です。水疱ができた際は、自己判断で潰さず、医師の指示に従って適切に処置を行います。
色素沈着
光線療法を繰り返し行うと、まれに照射部位が褐色に色づく色素沈着が見られることがあります。これは、紫外線の刺激によって皮膚のメラニン生成が一時的に活発になることが原因です
光線療法（紫外線療法）の料金
光線療法は保険適用で3割負担の場合、約1,020円です。この他、診察料などが別途かかります。
光線療法（紫外線療法）に関するよくある質問
光線療法を初めて受ける方の中には、痛みはあるのか、紫外線によるリスクはないのかなど不安を抱えている方も多くいらっしゃいます。
ここでは、治療を検討している方から多く寄せられる疑問にお答えします。
痛みはありますか？
光線療法は、基本的に痛みを伴わない治療です。照射中に軽い温かさを感じる程度で、施術後も日常生活に支障が出ることはほとんどありません。
ただし、肌の状態や照射量によっては、一時的に赤みやひりつきが出る場合があります。
保険適用になりますか？
光線療法は、保険適用になる治療法です。具体的には、尋常性乾癬、白斑、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、菌状息肉腫、円形脱毛症などが対象となります。
光線療法の治療間隔はどれくらいですか？
治療間隔は症状の進行度や反応によって異なりますが、週1～2回の頻度で行います。1回あたりの照射時間は1分から2分と短く、通勤や通学の合間にも通いやすい治療法です。
光線療法の効果はいつあらわれますか？
光線療法の効果は、尋常性乾癬や白斑の場合は約10回目、掌蹠膿疱症は約3～10回目で効果がで始めることが多いとされています。医師が経過を見ながら照射量を調整し、効果的なペースで治療を進めていきます。
紫外線を浴びることによる発がん性の心配はありますか？
医療機関で行う光線療法は、波長や照射量を厳密にコントロールしているため、発がん性のリスクは非常に低いとされています。
光線療法（紫外線療法）なら新宿駅前IGA皮膚科クリニック
新宿駅前IGA皮膚科クリニックでは、女性皮膚科専門医が患者さま一人ひとりの症状に合わせた光線療法を行っています。
当院では「セラビームUV308 mini LED」を導入し、乾癬や白斑、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症などさまざまな皮膚疾患の改善を目的とした治療を実施しています。
308nmの紫外線を病変部のみに照射するため、健康な皮膚への影響を抑えながら効果的に治療を行うことが可能です。
保険診療に対応しており、安全性と継続性を重視した治療で症状の改善と再発予防をサポートします。
監修：
新宿駅前IGA皮膚科クリニック 院長 伊賀 那津子
日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業
