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稗粒腫とは

稗粒腫(はいりゅうしゅ)は、皮膚の表面にできる小さな白い粒状のふくらみで、「ミリウム」とも呼ばれています。
触ると少し硬く、白や黄白色の米粒のような見た目が特徴の、皮膚良性腫瘤の一つです。
美容上の悩みとしてもよく相談されるものです。
高齢、女性に多いといわれ、また多汗・水疱によって続発性稗粒腫が生じやすいと考えられています。
また、新生児の40〜50%にみられ、通常2-3週間で自然治癒します。
特に痛みやかゆみなどの自覚症状がなく、治療しなくとも日常生活に支障がないため、放置されることもありますが、見た目が気になる場合や数が増えてきた場合には、皮膚科にてお気軽にご相談ください。
稗粒腫の症状
稗粒腫は、皮膚の表面にできる白、あるいは黄白色の小さな粒のようなふくらみとして現れます。
皮膚の中に硬い内容物が詰まっており、触ると少し硬さを感じます。
通常は直径1〜2ミリほどですが、大きくなると3ミリを超えることもあります。
数は1個だけの場合もあれば、複数がまとまって出現することもあり、左右対称に出る場合もあります。
白ニキビと一見似ていますが、痛みや炎症がないのが異なる点です。
よくみられる部位は、目のまわり(下まぶたやまぶたの縁)や頬、額、鼻先、こめかみなどですが、手足や陰部など、身体のどこにでも発症する可能性があります。
新生児では主に鼻、頭皮、まぶた、頬に自然発生することが多く、特に治療をしなくても生後数週間で自然に消えることがほとんどです。
痛みや炎症を伴わないため放置してしまう方も多いのですが、成人の稗粒腫は自然消失しにくく、見た目の印象に影響することから、自己判断により針で孔を開け、押し出そうとする方もいらっしゃいます。
しかし、そうすると皮膚を傷つけて跡が残ったり、細菌感染や炎症を引き起こしたりするリスクがあるため、決して行わないようにしましょう。
稗粒腫の原因
稗粒腫は、皮膚の中に角質(皮膚の老廃物やタンパク質)がたまって袋状に閉じ込められた状態になることで発生します。
この袋の中には皮脂ではなく、ケラチンと呼ばれるタンパク質成分が詰まっています。
稗粒腫が発生する原因は明確には解明されていない部分もありますが、高齢者に稗粒腫が多く見られるため皮膚のターンオーバーが低下し、新陳代謝が低下することも稗粒腫の誘因と考えられています。
続発性の稗粒腫としては、水疱、切り傷や擦り傷、やけどなどの外傷や皮膚炎、手術跡などにできることが多くみられます。
続発性稗粒腫の発生には皮膚の汗腺が関係している報告があります。
傷にならないほどの刺激でも発症することがあり、目元は皮膚が薄いため、強くこすっただけでも発症する危険があるので注意が必要です。
このほか、水ぼうそうの痕にできることも多く、さらに先天的疾患や薬剤が原因となる場合もあります。
稗粒腫の誘因となる薬剤は多数ありますが代表的なものとしてステロイドの長期外用、ハイドロキノン外用など が知られています。
稗粒腫の治療
稗粒腫は良性の皮膚腫瘍であり、必ずしも治療を要する疾患ではなく、経過観察でも問題ありません。
しかし、美容的な理由や増殖による不快感から、除去を希望される場合は、当院にて除去が可能です。
基本的な治療は物理的除去が中心です。
標準的には、専用の針(ランセット)で穿刺して、内容物を押し出す方法(穿刺除去)が用いられます。
処置は短時間で終わり、出血もごくわずかで、痛みも最小限に抑えられ、傷跡もほとんど残らず、治療後は通常のスキンケアが可能です。
この穿刺除去は、保険診療にて行うことができます。
また炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)を照射し、熱エネルギーを発生させ、その熱が冷める過程で稗粒腫の組織を破壊して除去するという方法もあります。
治療後、皮膚に赤みが生じたり、かさぶたができたりしますが、かさぶたは1~2週間で剥がれ、赤みなども数ヶ月で目立たなくなります。
短時間で終わる処置ですが、再発や色素沈着に注意が必要です。
炭酸ガスレーザー治療は保険適用外となります。
稗粒腫のスキンケア・ホームケア
再発を予防するためには、スキンケアや生活習慣の見直しも大切です。
ターンオーバーが遅延すると、古い角質(ケラチン)が排出されにくくなり、稗粒腫の嚢胞形成を促進すると考えられています。
皮膚のバリア機能を整え、肌の代謝を整えましょう。
具体的にはセラミドや天然保湿因子を積極的にスキンケアで補うことが望ましいです。
また溜まった古い角質の排出を促すための角質ケア成分(AHA、BHA、乳酸など)を取り入れることが大切です。
ピーリング洗顔も有効と考えられます。
稗粒腫を取ろうと思って、過剰な洗顔やこすりすぎは、皮膚のバリア機能を悪化させるので逆効果です。
また、紫外線対策は、肌の代謝を整える上でも欠かせません。

監修:
新宿駅前IGA皮膚科クリニック 院長 伊賀 那津子
日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業