目次
肝斑治療に使われるトラネキサム酸内服薬の特徴

肝斑そのものはシミの一種ではありますが、他のシミと比べると治りにくいことが特徴です。左右対称に、境界線がはっきりしないもやっとしたシミができます。
肝斑治療において、トラネキサム酸の内服薬は、最も一般的な治療方法の一つです。
肝斑は、紫外線や摩擦などの外的刺激に加え、メラニンを作る指令を出すプラスミンという物質が関わっています。トラネキサム酸は、このプラスミンを抑制することで肝斑の治療を行う薬です。
トラネキサム酸とは
トラネキサム酸は、もともと止血薬として使われていた成分です。炎症を抑える働きや、メラニン生成の指令を抑制する作用があります。肝斑は、通常のシミとは異なり、ホルモンバランスの変化や摩擦などにより、メラニンを作る働きが過剰になっている状態です。
トラネキサム酸は、この過剰なメラニン生成を抑えて肝斑を改善します。内服薬として用いられる他、スキンケアの外用薬としても使用されています。
トラネキサム酸の効果
トラネキサム酸は、肝斑の原因とされるプラスミンの働きを抑える成分です。プラスミンは、メラニンを作る細胞であるメラノサイトに指令を出す役割があります。
過剰に働くと、メラニン生成が活発になり、肝斑が濃くなります。トラネキサム酸は、このプラスミンの活性を抑制し、メラニンが作られすぎるのを防いで肝斑の悪化を防ぐのです。
また、トラネキサム酸には抗炎症作用があるため、皮膚の赤みやヒリつきの緩和にも役立ちます。
トラネキサム酸の服用方法
トラネキサム酸の内服薬は、1日あたり750~1500mgを服用する方法が一般的です。1日3回、食後に服用してください。外用薬の場合は、朝晩の洗顔後の清潔な肌に適量を塗布します。
トラネキサム酸との併用がおすすめの薬
肝斑治療では、トラネキサム酸内服とビタミンC内服を併用することで、より高い改善効果が期待できます。ビタミンCには、紫外線や摩擦などの刺激で発生するメラニンの生成を抑える働きがあるためです。
また、できてしまったメラニンの還元を促すため、トラネキサム酸との相性がよく、二方向から肝斑にアプローチできるようになります。
さらに、ビタミンCは肌のターンオーバーを整え、透明感のある肌へ導く働きもあるため、肝斑治療のサポートに最適です。
トラネキサム酸で肝斑治療を行うメリット・デメリット
トラネキサム酸は、肝斑の原因に直接アプローチできる数少ない薬ですが、副作用が出る可能性もゼロではありません。
ここでは、治療を始める前に知っておきたいメリットとデメリットを解説します。
メリット
トラネキサム酸には、次のようなメリットがあります。
- 肝斑の根本原因に関わるプラスミンの働きを抑制する
- 内服や外用を続けることで肌全体の色ムラが整う
- ビタミンCの内服やレーザー治療との併用がしやすい
トラネキサム酸は、メラニン生成の指令段階に介入できるため、肝斑に対してより的確な治療が可能です。また、内服や外用を継続することで徐々に明るく均一なトーンへ導く効果が期待できます。
ビタミンCや一部のレーザー治療とも併用ができ、総合的な治療計画を立てやすい点も利点です。
デメリット
一方で、トラネキサム酸にはデメリットも存在します。
- 治療効果があらわれるまでに数ヶ月ほどかかる
- 副作用が出ることがある
- 低用量ピル服用中の方は推奨されない
トラネキサム酸の治療効果を実感するには、時間がかかります。少なくとも3ヶ月、場合によってはそれ以上の使用が必要なケースもあるでしょう。そのため、即効性を求める方には向いていません。
また、内服薬の場合は血栓症や吐き気などの副作用が出る場合があります。この他、血栓症のリスクが高まる可能性があるため、医師の判断によっては低用量ピルを服用中の方は内服薬を使用できないことがあります。
トラネキサム酸内服薬の副作用と注意点
肝斑の治療では、トラネキサム酸を数ヶ月単位で継続することが多いため、安全に服用を続けるためには正しい知識を身につけておく必要があります。
ここでは、トラネキサム酸の内服薬を使用する場合の副作用と注意点を解説します。
代表的な副作用
トラネキサム酸の内服薬では、以下のような副作用が報告されています。
| 過敏症 | そう痒感、発疹など |
| 消化器 | 食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、胸焼けなど |
| その他 | 眠気 |
いずれも発症頻度は不明です。この他、重大な副作用として痙攣も報告されています。痙攣は人工透析をしている方で見られる可能性があります。
血栓症のリスクについて
トラネキサム酸は、血液を固まりやすくする作用があるため、血栓症の既往がある方や、家族歴がある方は慎重に服用しなければなりません。
血栓症とは、血管の中で血のかたまりができてしまう状態です。放置すると脳梗塞や心筋梗塞につながることがあります。
通常の健康な方が適切な量を服用する分にはリスクは高くありませんが、喫煙している方、肥満の方などはリスクが高くなるため注意しましょう。突然の息切れや胸の痛みなどの症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。
併用に注意が必要な薬
トラネキサム酸には、併用注意薬があります。相互作用を起こす可能性があるため、以下の薬を服用中の方は、医師へご相談ください。
| ヘモコアグラーゼ | 大量併用により、血栓ができやすくなる恐れがある |
| バトロキソビン | 血栓や塞栓症を起こす恐れがある |
| 凝固因子製剤 | 口腔などの部位で血液が固まりやすくなる恐れがある |
併用ができない方
トラネキサム酸の内服薬は、肝斑の改善に効果が期待できる薬ですが、すべての方が安全に使用できるわけではありません。
併用禁忌薬を服用している方
トラネキサム酸は、以下の薬と併用禁忌です。
- トロンビン
トロンビンは、血液凝固促進薬として使われます。血栓ができやすくなるため、併用はできません。
基礎疾患がある方
以下に該当する方は、必ずしもトラネキサム酸が禁忌というわけではありませんが、医師の判断により服用できない場合があります。
- 血栓がある方
- 消化性凝固障害がある方
- 術後の臥床状態にある方
- 圧迫止血の処置を受けている方
- 腎不全がある方
- トラネキサム酸の成分に対して過敏症の既往歴がある方
妊娠中や授乳中の方
妊娠中や授乳中の方も医師の判断によりトラネキサム酸の服用ができないことがあります。胎児や乳児に対する有害作用は確認されていませんが、安全性も確立されていません。
当院では、安全性を重視して妊娠中や授乳中の方への処方は控えております。
トラネキサム酸の効果はいつから?肝斑改善までの期間の目安
トラネキサム酸の効果があらわれるまでには、一定の期間が必要です。即効性のある治療ではなく、時間をかけて徐々に改善していきます。
効果が出るまでの一般的な期間
トラネキサム酸の効果を実感するまでには、一般的に3ヶ月ほどの継続が必要です。人によっては、数ヶ月から半年ほど治療を続ける必要があります。肝斑は通常のシミよりも治療に時間がかかる傾向があるため、焦らず継続することが重要です。
また、レーザー治療や美白外用薬、ビタミンCなどと併用すると、より効果を実感しやすくなるケースがあります。
トラネキサム酸の服用を中止するとどうなる?
トラネキサム酸の服用を中止すると、肝斑が再び濃くなる可能性があります。服用をやめると、プラスミンの働きが元に戻り、刺激によって再びメラニンの生成が活発になることがあるためです。
ただし、中止後すぐに悪化するわけではなく、紫外線や摩擦などの刺激が強い場合に濃くなりやすくなります。肝斑は慢性的に変化しやすい症状であるため、医師と相談しながら治療の継続や中止のタイミングを決めることが大切です。
肝斑へのトラネキサム酸内服薬の飲み方
肝斑の治療にトラネキサム酸を用いる場合、正しい用法用量を守って服用する必要があります。
飲み忘れや中断によって改善が遅れたり、再び肝斑が濃く見えるようになったりするケースもあるため、必ず医師の指示に従って服用してください。
処方薬の標準的な用法用量
肝斑治療で処方されるトラネキサム酸は、1日750~1,500mgを目安に1日3回に分けて服用する方法が基本です。治療効果を高めるために、ビタミンCなどと組み合わせて処方されることもあります。
効果を短期間で得るために自己判断で増量する方もいますが、副作用のリスクが高まるため避けてください。
市販薬と処方薬の違い
トラネキサム酸の内服薬には、処方薬の他に市販薬もあります。処方薬の場合は、1日最大1,500mgまで服用できますが、市販薬は750mgまでしか服用できません。
また、市販薬の場合は2ヶ月服用した後、2ヶ月休薬する必要があります。
トラネキサム酸の内服薬の適応がない方は外用薬の使用を検討する
トラネキサム酸の内服薬は、すべての方に適応があるわけではありません。血栓症の既往がある方、特定の薬を服用している方、妊娠中や授乳中の方などには、安全性の観点から内服薬が処方されない場合があります。
内服が適さない場合は、外用薬が適応となります。外用薬は全身への影響が少なく、副作用のリスクが内服薬よりも低い点が大きな利点です。
内服が適応とならない場合は、外用薬を中心とした治療に切り替えることで、安全に肝斑へアプローチできます。
肝斑に有効なトラネキサム酸内服薬に関するよくある質問
肝斑治療に有効なトラネキサム酸の内服薬は、多くの方が服用しており実際に効果を実感している方も多数いらっしゃいます。ここでは、特にお問い合わせの多い4つの質問について回答します。
肝斑治療にトラネキサム酸を処方してもらう場合、保険適用になりますか?
トラネキサム酸による肝斑治療は原則として保険適用の対象外です。肝斑は美容目的の治療に分類されるため、保険診療ではなく自費診療での取り扱いとなります。
クリニックによって料金が異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。当院では、トラネキサム酸の内服薬1ヶ月分を税込3,300円で処方しております。
トラネキサム酸を飲み忘れたらどうすればいいですか?
トラネキサム酸を飲み忘れた場合は、気付いた時点で忘れた分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、飲み忘れた分を飛ばし、次の分から通常通り服用しましょう。
決して、忘れた分を合わせて2回分飲まないようにしてください。
トラネキサム酸の内服で肝斑は完全に消えますか?
トラネキサム酸の内服で肝斑が完全に消失するかどうかは、個人差があります。肝斑は、ホルモンバランスや紫外線、摩擦などの影響を受けやすく、薬の効果だけでは完全に消えない場合もあります。
また、治療効果を維持するためには、紫外線対策やスキンケアを継続することも大切です。
妊娠、授乳中でもトラネキサム酸治療ができますか?
当院では、安全性を考慮して妊娠中や授乳中の方については、トラネキサム酸の内服薬は原則不可としています。妊娠中は血液が凝固しやすくなるため、トラネキサム酸が持つ血栓形成作用による影響を受けやすくなるためです。
また、胎児や乳児への安全性が十分に確立されていないため、内服薬による治療は推奨できません。一方で、皮膚に直接作用する外用薬であれば、全身への吸収がごくわずかであり、比較的安全に使用できます。
料金
| 全て税込表示 | |
| トラネキサム酸 500mg x 90錠(1ヶ月分) | 3,300円 |
トラネキサム酸による肝斑治療なら新宿駅前IGA皮膚科クリニック
肝斑は一般的なシミと異なり、紫外線だけでなくホルモンバランスや摩擦など複合的な要因が関わるため、適切な診断と治療計画が必要です。
新宿駅前IGA皮膚科クリニックでは、女性の皮膚科専門医が一人ひとりの肌状態を丁寧に診察し、トラネキサム酸の処方やレーザー治療など、多角的な視点から最適な治療を提案しています。
新宿駅南口・西口からすぐの通いやすい立地のため、継続が必要な肝斑治療でも無理なく通院することが可能です。肝斑についてお悩みの方は、お気軽に当院へご相談ください。

監修:
新宿駅前IGA皮膚科クリニック 院長 伊賀 那津子
日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業