目次
シミ・そばかすとは

シミやそばかすは、肌の色むらやトーンの乱れとして目立ちやすく、多くの方にとって美容上の悩みのひとつです。
特に年齢とともに現れやすいシミ(老人性色素斑)や、若い頃から気になるそばかすは、自己ケアだけでは改善が難しい場合があります。
当院では、医療的な視点と専門機器を用いて、原因や種類に応じて適切な治療を行っています。
シミ・そばかすの種類
シミ(老人性色素斑)

一般的にシミと呼ばれているものは、老人性色素斑に該当します。「老人性」とありますが、30代でできる方も珍しくありません。
シミは、肌にできる色素沈着のことで、紫外線や加齢、ホルモンバランスの乱れ、炎症後の色素沈着などが原因で起こります。
頬、額、手の甲など、日光の当たりやすい部位にできやすく、濃くなったり、範囲が広がったりすることもあります。
そばかす

そばかす(雀卵斑)は、遺伝的な要因が強く、幼少期から思春期にかけて目立つことが多い斑点状の色素沈着です。
直径3mm程度の小さなシミが左右の頬や鼻を中心にできます。
紫外線によって濃くなる傾向があり、色白の方や皮膚の薄い方に多く見られます。
一方でシミ、そばかすと一見似ているようでも異なるのが以下の疾患です。
肝斑

左右対称に頬や額に現れる茶褐色のシミで、境界が不明瞭でもやもやとした色むらがあるのが特徴です。
女性にできやすいシミですが、男性にできることもあります。
主な原因は解明されていませんが、ホルモンバランスの乱れや肌への刺激・摩擦が原因になると考えられています。
炎症後色素沈着

炎症後色素沈着とは、ニキビや虫刺され、やけど、外傷などの炎症が治った後に、その部分にメラニンが過剰に沈着して残るシミのことです。炎症による赤みが引いた後、色素沈着として跡が残ってしまうことがあります。
この他、毛抜きを使用したり洗顔でゴシゴシこすったりなどの刺激が原因になることも珍しくありません。
通常、炎症後色素沈着は時間の経過とともに改善していきますが、症状によっては治るまでに数年かかる場合もあります。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

ADMとは、後天性真皮メラノサイトーシスと呼ばれるあざの一種です。頬尻や目尻、額などに広がる1~3mm程度の小さなシミとして知られています。思春期以降の女性でよく見られるシミです。
肝斑と同様、両側に左右対称に広がりますが、色味が青色~灰色をしているのが大きな違いです。また、一般的なシミは表皮にメラニン色素が蓄積しますが、ADMではさらに奥の真皮にあるメラノサイトが影響しています。
シミ・そばかすの原因
シミ(老人性色素斑)の原因
シミの主な原因は紫外線です。
紫外線を浴びると、皮膚は自らを守るためにメラニンを生成します。
通常は肌の代謝とともにメラニンも排出されますが、年齢やストレス、ホルモンバランスの乱れなどで排出がうまくいかなくなると、肌に色素が残り、シミとなって現れます。
そばかすの原因
そばかすは遺伝的な体質によるメラニンの生成過剰が主な原因です。体質により、メラニンが作られやすい方にそばかすができやすいことが分かっています。
紫外線を浴びることで色が濃くなったり、数が増えたりすることが特徴です。皮膚のターンオーバーがうまくいかないと、色素が沈着しやすくなります。
欧米人でそばかすがある方をよく見かけるのは、フェオメラニンというメラニンが遺伝的に生成されやすい体質の方が多いためです。
メラニンにはフェオメラニンとユーメラニンがあり、フェオメラニンが多い方は紫外線の影響でそばかすができやすくなります。
肝斑の原因
肝斑の原因は明らかにされていませんが、ホルモンバランスの乱れや肌への刺激・摩擦が関係していると考えられています。
妊娠出産、更年期、経口避妊薬の服用によって肝斑が発症したり、もともとあった肝斑が悪化したりするケースもあります。
また、紫外線やストレスも原因の1つです。
炎症後色素沈着の原因
ニキビや虫刺され、やけどなどが原因で起こります。肌に炎症が起きると、メラノサイトが刺激されてメラニンが生成され、これが蓄積することで色素沈着として残ってしまうのです。
ただし、炎症後色素沈着は時間の経過とともに改善していくことがほとんどです。しかし、治るまでに数年かかることもあり、見た目が気になってしまう方も少なくありません。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の原因
ADMの原因については、まだはっきりとしたことが分かっていません。
現段階では、本来なら表皮にあるはずのメラノサイトが真皮に入り込み、そこでメラニンを産生することが原因だと考えられています。
ホルモンの影響や遺伝、紫外線などの影響が関係しているといわれています。
シミ・そばかす・肝斑・炎症後色素沈着・ADMの見分け方

自分のシミが一般的なシミなのか、それともそばかすや肝斑、炎症後色素沈着なのか見分けがつかない方もいらっしゃるでしょう。
これらの色素トラブルは、見た目が似ており、自己判断が難しい場合があります。一般的に、それぞれ以下のような特徴があります。
| 主な原因 | 特徴 | できやすい部位 | 色味・形状 | |
| シミ(老人性色素斑) | 紫外線、加齢 | 境界がはっきりしている | 顔、手の甲 | 濃い茶色で円形 |
| そばかす | 遺伝、紫外線 | 幼少期から思春期に増える | 頬、鼻 | 小さな薄茶色の点 |
| 肝斑 | ホルモン変動、紫外線、摩擦・刺激 | 左右対称に広がる | 頬、額、口周り | ぼんやりした茶色 |
| 炎症後色素沈着 | ニキビ、傷、炎症 | 炎症後に残る | 顔、背中など | 赤~茶色の跡 |
| ADM | 紫外線、ホルモンバランスの変化、遺伝などが関係していると考えられている | 皮膚の深い部分に色素が定着する | 頬、こめかみ、鼻の付け根など | 灰褐色~青褐色の小さな斑点 |
シミ・そばかすの種類ごとの治療法
シミやそばかすにはさまざまな種類があり、種類ごとに適した治療法が異なります。
老人性色素斑(日光黒子)
加齢と紫外線の影響でできるシミです。レーザーによるシミ治療や光治療が有効です。
1回の照射で改善が期待できるケースもありますが、肌質や症状によっては複数回の施術が必要です。
当院では主にピコレーザーのピコシュアプロを使用します。
そばかす(雀卵斑)
遺伝的要因が強く、レーザーや光治療で薄くすることができますが、再発しやすいことが知られています。
そのため、複数回の施術を重ねる必要があります。肌質や症状によって必要な治療回数が異なるため、医師と相談したうえで治療方針を決めることが重要です。
一方でシミ、そばかすと一見似ているようでも異なるのが以下の疾患です。
当院では主にフォトフェイシャル(ステラM22)またはピコレーザー(ピコシュアプロ)を用いた治療を行います。
肝斑
肝斑は、左右対称に現れる茶色っぽいシミです。刺激に弱く、ピーリングや強いレーザーは向いていません。誤った治療を行うとかえって症状が悪化するため、適切な治療を行うことが重要です。
当院では、熱ダメージを抑えたピコレーザー(ピコシュアプロ)や、リバースピールなどによる治療を行っています。
炎症後色素沈着
ニキビやかぶれなどの炎症後に残るシミです。ハイドロキノン外用やピーリング、ピコトーニングが有効です。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
ADMには、レーザー治療が行われます。現在、効果が確認されているのはQスイッチレーザーやピコレーザーです。
当院で取り扱っているピコシュアプロは、効率よくメラニンを破壊し、ADMを目立たなくする効果が期待できます。
ただし、1回の施術では効果が不十分なこともあり、シミの濃さに合わせて複数回の施術が必要です。
当院で行うシミ・そばかす治療
レーザー治療(ピコシュアプロ)

ピコシュアプロは755nmアレキサンドライト波長のピコ秒レーザーで、1兆分の1秒の極短照射により衝撃波でメラニンを粉砕します。
755nm波長はメラニン吸収率が1064nm波長の約3倍高く、低エネルギーで効率的にシミを除去することが可能です。
ヘモグロビン吸収率が低いため血管損傷を避け、炎症後色素沈着(PIH)リスクを大幅に軽減できます。
既存のPIH改善効果も期待できますが、新たなPIH発生リスクは完全にゼロではないため慎重な出力調整と後述するハイドロキノン・トレチノインを用いたアフターケアが必要です。
推奨施術回数
1〜3回(肝斑以外のシミ)
副作用
赤み、かさぶた、色素沈着のリスク
ダウンタイム
約3〜7日
光治療(ステラM22)

IPLと呼ばれる広い波長の光を肌に照射し、メラニンに反応してシミやそばかすを薄くするだけでなく、赤ら顔や毛穴、肌のハリ改善にも効果が期待されます。
シミとそばかすが混在する方におすすめです。
シミ治療においては複数のモードを使い分けます。PHOTOFACIALモード(515nm/560nmフィルター)で表皮のメラニンを破砕してシミやくすみを改善し、SPOTモードで気になるシミにピンポイント高出力照射を行います。MELASMAモード(640nmフィルター)では肝斑に配慮した刺激の少ない照射も可能です。
そばかす治療に特におすすめの理由は、皮膚表面の浅い層にアプローチできる短波長を多く含むため、薄いそばかすにも効果的に対応できることです。
シミとそばかすが混在する方には、複数のフィルターを組み合わせることで一度の施術で包括的な治療を提供します。
推奨施術回数
3〜5回(1カ月ごと)
副作用
一時的な赤み、かさぶた
ダウンタイム
軽度(翌日からメイク可)
外用薬治療(ハイドロキノン、トレチノインなど)

- ハイドロキノン:メラニン漂白作用、合成を阻害してシミを薄くするとされる強力な美白剤です
- トレチノイン:肌のターンオーバーを促進して、色素の排出を助けることが期待されます
これらを単独または組み合わせて使うことがあります(例:ハイドロキノン+トレチノイン療法)。
併用療法では相乗効果が得られ、トレチノインが表皮のターンオーバーを促進してメラニン排出を助ける一方、ハイドロキノンが新たなメラニン合成を抑制するため、単独使用より効率的にシミを改善できます。
推奨施術期間
2〜3カ月
副作用
赤み、かさつき、刺激感
ダウンタイム
軽度(経過観察が必要)
禁忌
敏感肌、アレルギー体質、妊娠中
内服薬治療(トラネキサム酸、ビタミンCなど)


- トラネキサム酸:肝斑や炎症後色素沈着に有効で、メラニンの生成を抑制するとされています。
- ビタミンC:美白・抗酸化作用があるとされ、内服・外用どちらでも使用されます。
- L-システイン、グルタチオン:メラニン代謝を助け、抗酸化作用もあると考えられています。
これらは肌の内側からのケアとして補助的に用いられ、外用・レーザーと組み合わせることが多くあります。
推奨施術期間
3カ月以上継続
副作用
胃部不快感、血栓傾向(トラネキサム酸)
ダウンタイム
なし
禁忌
血栓症の既往歴、妊娠・授乳中
シミ・そばかすを放置するデメリット
シミやそばかすは、見た目の問題だけでなく、放置によって肌の病変を見逃すことにつながる可能性があります。
ただのシミだと思って放置していたものが、皮膚疾患や前がん病変だったというケースもあるため、早めの診断と適切なケアが重要です。
脂漏性角化症に進展することがある
シミを放置しておくと、イボのような病変が見られる脂漏性角化症へと変化することがあります。なぜ脂漏性角化症が生じるのか原因は分かっていません。
大きな害はなく、がん化することもありませんが、美容面で見た目が気になってしまう方が多いでしょう。
隠れている病気を見逃すことがある
シミやそばかすに見えても、実際には皮膚がんや炎症性疾患であるケースもまれにあります。代表的な病気は、以下の通りです。
- 表在型基底細胞癌
- 悪性黒色腫
- 固定薬疹
- ボーエン病
日光が当たりづらい部位にできたシミでただれや盛り上がりが見られる場合は、すぐに皮膚科を受診してください。
シミ・そばかすの治療に関するよくある質問
シミやそばかすの治療は、原因や種類によって適した方法が異なります。ここでは、患者さまから特に寄せられる質問にお答えします。
皮膚科でのシミ取りは保険適用になりますか?
シミ取り治療は多くの場合、美容目的と見なされるため保険適用外(自由診療)です。レーザー治療やピーリング、外用薬などによる治療は、自費診療に分類され、クリニックごとに費用が異なります。
シミ取りレーザー治療のデメリットはありますか?
シミ取りレーザーの施術後は、一時的に赤みやかさぶたが生じることがあり、ダウンタイムが必要です。また、治療直後は紫外線に敏感になるため、日焼け対策が欠かせません。
さらに、シミの種類を誤ってレーザーを照射すると、肝斑が悪化するリスクもあります。治療効果や副作用には個人差があるため、医師による正確な診断が欠かせません。
そばかすのレーザー治療は1回で終わりますか?
そばかすのレーザー治療は1回で薄くなることもありますが、完全に消えるまでには基本的に複数回の施術が必要な場合が多いです。
例として、ピコシュアプロを使ったレーザー治療の場合、1~3回程度の治療が必要になります。
ただし、取ったら終わりでなく、50%に炎症後色素沈着が出るといわれています。当院では炎症後色素沈着が起こりにくいとされるピコシュアプロを使用していますが、それでも、炎症後色素沈着のケアが必要です。
レーザーやフォトフェイシャルの後の炎症後色素沈着の予防方法を教えてください
レーザーやフォトフェイシャルの後の肌は刺激に敏感なため、色素沈着を防ぐには徹底したケアが重要です。まず、日焼け止めを毎日欠かさず使用し、紫外線から肌を守りましょう。
洗顔はこすらず優しく行うことがポイントです。また、ハイドロキノンやトレチノインを必要に応じて使用し、メラニンの生成を抑えましょう。
肌が弱くてハイドロキノンやトレチノインの使用が難しい方は、ビタミンCの外用、肌のバリア機能を整えるセラミド配合の保湿、メラニンの生成を抑制するトラネキサム酸やビタミンCの内服を併用するのも効果的です。
当院のシミ・そばかすの治療方針について
シミ・そばかす治療では、症状の種類(肝斑・老人性色素斑・雀卵斑・炎症後色素沈着など)と肌質を見極めて治療法を選択・組み合わせることが重要です。
当院では、「VISIA」などの肌診断機器を用い、目に見えるシミだけでなく、潜在的な「隠れジミ」や肌全体の状態を詳細に分析いたします。
診断結果と患者さまのお悩み、ライフスタイルを踏まえ、レーザーや光治療といった医療機器を用いた施術だけでなく、内服・外用・薬剤導入などの総合的なアプローチによる、効果的で無理のない治療プランをご提案します。
一人ひとりの肌に寄り添い、自然で健康的な美しさを目指すことが、当院の美容皮膚科の基本方針です。
未承認医薬品等に関するご案内
・未承認医薬品であることの明示
本施術に使用する医薬品は、医薬品医療機器等法上、未承認医薬品です。
・入手経路等の明示
施術に用いる医薬品および機器は、当院医師の判断の元、国内輸入販売代理店を通じて個人輸入手続きを行ったものです。
・国内の承認医薬品等の有無の明示
同一の性能を有する国内承認医薬品・医療機器はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報の明示
諸外国で重篤な安全性情報の報告はありません。

監修:
新宿駅前IGA皮膚科クリニック 院長 伊賀 那津子
日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業
