いぼとは

ウイルス性いぼ・老人性いぼ

「いぼ」とは、皮膚や粘膜にできる小さな盛り上がりやしこりの総称で、医学的には「疣贅(ゆうぜい)」と呼ばれます。
いぼの種類には、ウイルス感染による「ウイルス性いぼ」、加齢によって現れる「老人性いぼ」、摩擦や圧迫などの刺激が原因となるものなどがあり、それぞれ治療法や経過も異なります。

いずれも一見、良性の変化に見えますが、放置して悪化するケースや、ほかの皮膚疾患と紛らわしい場合もあるため、一度、専門医の診断を受けることをお勧めします。

ウイルス性いぼについて

ウイルス性いぼは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染によって引き起こされる皮膚の腫瘍で、医学的には「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」と呼ばれます。
感染性があり、皮膚の小さな傷やすり傷などからウイルスが侵入することで発症します。
小児に多く見られますが、免疫力の低下している高齢の方や病気療養中の方にも発症することがあります。

ウイルス性いぼの症状

ウイルス性いぼは、主に手指、足の裏、膝、顔など、皮膚が外界と接する場所にできやすいのが特徴です。
初期には小さなざらざらとした突起や皮膚色の盛り上がりとして現れ、次第に硬くなっていきます。
放置すると数が増えたり、大きくなったり、周囲に広がって集簇することもあります。

足の裏にできるいぼは体重によって圧迫されるため、皮膚の中に潜り込むような形で「タコ」や「魚の目」と見分けがつきにくいこともありますが、表面に黒い点(出血点)が見られる場合にはウイルス性いぼが疑われます。
まれにかゆみや軽い痛みを伴うこともありますが、通常は無症状のまま経過します。

症状は数ヶ月から数年続くことがあり、自然に治るケースもありますが、特に免疫力が低下している方では長引くことが多く、積極的な治療が必要になることがあります。

ウイルス性いぼの原因

ウイルス性いぼは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染によって引き起こされます。
HPVには100種類以上の型があり、その中でも皮膚に感染していぼを生じさせるのは特定の型です。
ウイルスは皮膚の微細な傷から侵入し、表皮の細胞に感染して異常増殖を引き起こします。

感染は、いぼを触った手で他の部位をこすることや、共用タオルや靴などからうつることもあります。
特に足の裏にできるいぼは、公衆浴場やプール、スポーツジムのシャワールームなど、素足で歩く場所で感染しやすい傾向があります。

また、免疫力が低下しているとウイルスに対する抵抗力が弱まり、いぼができやすくなったり治りにくくなったりします。
アトピー性皮膚炎や糖尿病、免疫抑制薬の使用中の方などでは、感染や再発に注意が必要です。

ウイルス性いぼの治療

ウイルス性いぼは自然治癒することもありますが、見た目の問題や拡大・再発のリスクがあるため、皮膚科での治療が望まれます。

まず代表的な治療が冷凍凝固療法(液体窒素凍結療法)で、-196℃の液体窒素を患部に当ててウイルス感染細胞を壊死させます。
通常1〜2週間おきに複数回繰り返し行い、最も一般的な治療法です。
また、角質溶解治療では、サリチル酸を含む外用薬で角質を軟らかくして徐々に削り、ウイルスを除去します。
加えて、電気焼灼やレーザー治療による物理的な除去もありますが、これらは主に保険適用外です。

薬物治療では、ヨクイニン(ヨクイニンエキス顆粒)が皮膚の代謝を整える補助療法として処方されることがあります。
皮膚の抵抗力を高め、再発予防にも使われます。
難治性の場合はモノクロロ酢酸という強力な酸を爪楊枝に付着させて、イボに浸透させ、イボのウイルスを死滅させる方法もあります。

このように、ウイルス性いぼの治療は症状の程度や部位、患者さまの年齢や治療歴に応じて最適な方法を選び、必要に応じて複数の治療を併用しながら進めていきます。
治療は継続が必要であり、自己判断で削ることや、無理に取り除こうとするのは感染拡大の原因になるため避けましょう。

老人性いぼについて

老人性いぼは、加齢とともに皮膚に現れる良性の腫瘍で、医学的には「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」と呼ばれます。
皮膚の老化に伴う変化の一つで、顔や体幹、手足などに褐色から黒色の盛り上がりが見られます。
ウイルス感染ではないため感染性はなく、人にうつることはありません。

老人性いぼの症状

老人性いぼは、肌にできる小さなシミや薄い斑点のような状態から始まり、徐々に大きく、また色が濃くなったり、表面がざらざらしてきたりするのが一般的です。
形状は平坦なものからドーム状に盛り上がるものまでさまざまで、色は肌色から黒色まで幅広く、表面に蝋状のつややカサカサした角質が付着していることがあります。

一度できてしまうと自然になくなることはありませんが、一時的に表面の凸凹が取れ、平らになることがあります。
痛みやかゆみは通常ありませんが、こすれたり引っかけたりすることで炎症を起こし、赤くなったり出血することもあります。
また、大きくなって目立つ、見た目が気になる、といった場合は、皮膚科での除去を検討する方も多くいらっしゃいます。

老人性いぼの原因

老人性いぼは、皮膚の老化現象の一部であり、加齢に伴って皮膚の表面の角化細胞が増殖して生じる良性腫瘍です。
長年にわたる紫外線の影響も関与しているとされ、日光によく当たる部位にできやすい傾向があります。

また、遺伝的な要因も関係していると考えられており、家族に同様の症状がある場合は、比較的若い年齢から出現することもあります。
ウイルス性いぼのように感染の心配はなく、健康上のリスクは少ないとされていますが、外見的に他の皮膚疾患と見分けがつきにくい場合もあるため、自己判断せず皮膚科での診断を受けることが大切です。

老人性いぼの治療

老人性いぼ(脂漏性角化症)は良性腫瘍のため、放置しても健康に重大な影響はなく、必ずしも治療を必要としませんが、美容上の理由や、服との摩擦による炎症・出血が起こる場合などには除去を希望される方が多くなっています。

治療の第一選択は外科的処置です。
特に一般的なのは液体窒素による冷凍凝固療法で、マイナス196℃の液体窒素を用いて病変を凍結・壊死させます。
また、炭酸ガスレーザー(CO₂レーザー)による蒸散や、電気焼灼(電気メス)なども用いられ、どれも比較的短時間で施術が可能です。

これらは病変が明らかな場合に保険適用となることもありますが、見た目の改善が主目的の場合は自由診療となることがあります。
進行度や部位、見た目の影響、出血やかゆみの有無などを総合的に判断し、患者さまに合った治療法を選択することが大切です。

なお、老人性いぼに見える皮膚病の中には、まれに皮膚がんが隠れていることもあるため、急激に大きくなった、出血やただれがある、という場合には必ず皮膚科で診断を受けましょう。

新宿駅前IGA皮膚科クリニック 院長 伊賀 那津子

監修:

新宿駅前IGA皮膚科クリニック 院長 伊賀 那津子
日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業